「信州 山のグレーディング」について 令和6年1月に長野県警察から発表された令和5年山岳遭難発生状況は、発生件数が302件（そのうち死者37人、行方不明3人、負傷者160人）に達し、前年よりも18件増える結果となった。依然として高い水準で遭難がおきている現実をみると、山の怖さを軽視したり、体力の過信によるところも大きい要因だと思うので、しっかりとした登山計画が必要だ。 長野県では、未然に遭難防止をするために、登山ルートの難易度と体力度をかけ合わせ、自分の力量にあった山選びができる「信州 山のグレーディング」を作成し、安全登山の啓蒙をしている。昨今のアウトドアブームもあり、山登りもカジュアルに考えている初心者の方も見受けられるので、まずは難易度と体力度の低いところから挑戦し、徐々にレベルアップしていってほしい。 グレーディングの内容と使い方 ○長野県内の一般的な登山ルート（123ルート）を、体力度と登山道を通過する際の技術的な難易度を評価。 ○1～10段階の体力度とＡ～Ｅの５段階の技術的難易度のグレーディング。 ○使用に当たっては、自分の調べたい山を「信州 山のグレーディング一リスト」から見つけ、体力度と難易度を確認。 ○遭難の多い中高年の方は、現在の体力や能力・技術に応じた山選びを。その際、過去に登った山のグレーディングが参考になるが、「過去の体力や能力・技術はあくまでも過去のもの」であることを十分認識してほしい。 難易度Aの山（初心者） ［登山道］ ・概ね整備済 ・転んだ場合でも転落・滑落の可能性は低い ・道迷いの心配は少ない ［技術・能力］ ・登山の装備が必要 難易度Bの山（初級者） ［登山道］ ・沢、崖、場所により雪渓などを通過 ・急な登下降がある ・道が分かりにくい所がある ・転んだ場合の転落・滑落事故につながる場所がある ［技術・能力］ ・登山経験が必要 ・地図読み能力があることが望ましい 難易度Cの山（中級者） ［登山道］ ・ハシゴくさり場、また、場所により雪溪や渡渉箇所がある ・ミスをすると転落・滑落などの事故になる場所がある ・案内標識が不十分な箇所も含まれる ［技術・能力］ ・地図読み能力、ハシゴ、くさり場などを通過できる身体能力が必要 難易度Dの山（上級者Ⅰ） ［登山道］ ・厳しい岩稜や不安定なガレ場、 ・ハシゴ・くさり場、藪漕ぎを必要とする箇所、場所により雪渓や渡渉箇所がある。 ・手を使う急な登下降がある ・ハシゴ・くさり場や案内標識などの人工的な補助は限定的で、転落・滑落の危険箇所が多い ［技術・能力］ ・地図読み能力、岩場、雪渓を安定して通過できるバランス能力や技術が必要 ・ルートファインディングの技術が必要 難易度Eの山（上級者Ⅱ） ［登山道］ ・緊張を強いられる厳しい岩稜の登下降が続き、転落・滑落の危険箇所が連続する ・深い藪漕ぎを必要とする箇所が連続する場合がある ［技術・能力］ ・地図読み能力、岩場、雪渓を安定して通過できるバランス能力や技術が必要 ・ルートファインディングの技術、高度な判断力が必要 ・登山者によってはロープを使わないと危険な場所もある