冬はスキーやスノーボード、グリーンシーズンは登山などでにぎわう白馬村。「通年型リゾート」として国内外で注目を集める。一方で、自然の恩恵にあずかる村だからこそ、持続可能な観光まちを目指した、地道で、挑戦的な取り組みが続く。そんな白馬村の魅力とは何か、白馬村の丸山俊郎村長にお話を伺った。 村独自の山岳・民宿文化、おもてなしの心を磨きたい ―観光人気の高い白馬村の魅力を紹介してください。 丸山村長（以下・丸山）：3,000ｍ級の北アルプスの山々が目の前にそびえ、パウダースノーが降り積もるというロケーションと気候は、スキーヤーやスノーボーダーを魅了しています。また、もともと登山から始まった観光地だけに、登山やトレッキングに訪れる人も多く、本場・欧州のアルプスにも負けない特別な場所です。冬だけではなく、グリーンシーズンも楽しめる「通年型山岳リゾート」が白馬村の魅力だと思います。

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  白馬さのさかスキー場
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  白馬五竜スキー場
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  Hakuba47 ウィンタースポーツパーク
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  白馬八方尾根スキー場
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  白馬岩岳スノーフィールド
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  八方尾根自然研究路
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  白馬岩岳ゆり園
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  白馬五竜高山植物園
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  hakuba47 マウンテンスポーツパーク
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  北尾根高原

―国内外で評価・人気が高いのはなぜでしょうか。 丸山：2023年には、国連世界観光機関のベストツーリズムビレッジを受賞しました。これは持続可能な小さな農漁村のような地域に与えられる国連の認証です。山岳やスキー、民宿発祥の地、旅人を迎えるおもてなしの精神、さらに農業・里山文化が高く評価されたと思います。2024年には観光庁から、日本版持続可能な観光ガイドラインに取り組んでいることを明示するロゴマーク国際認証を獲得。また、（一社）白馬村観光局が観光庁の「先駆的DMO」に選ばれました。白馬村は持続可能な観光地づくりを続けてきた成果として、数々の国際水準の認証を獲得し、サスティナブルな観光地として、訪れる人、住む人が豊かに過ごせる地を目指しているという認識が広く定着したのではないでしょうか。今後も一層、そうした認識や価値が高まるように取り組んでいきたいです。

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  ベストツーリズムビレッジ受賞式の様子
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  白馬村全景
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  白馬村の山岳風景

―インバウンド人気の秘密はなんでしょうか。 丸山：ウィンターシーズンのスキーやスノーボード、グリーンシーズンの登山・トレッキングといった、雄大な山岳景観の中で四季を通して楽しめるアクティビティが多いこと。そして、スキーや登山が文化として地域の人たちのライフスタイルに根付いていることも、魅力的に映るのではないでしょうか。白馬村は民宿発祥の地といわれていますが、これは登山やスキーに来た人を山岳ガイドの家や農家に泊めて温かくもてなしたことが始まりとされています。美しい自然環境に加え、こうした村の独自の山岳文化や民宿文化が新鮮で、口コミなどで広がったと考えられます。

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  民宿の人と一緒にスキーをする人たち（昭和26年2月撮影）
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  外国人観光客で賑わう白馬村
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  冬はスノーリゾート、夏は登山と世界に誇るマウンテンリゾート

―一方で、地価高騰などが住民生活にも影響するともいわれていますが…。 丸山：物価や地価の高騰などの不安が住民にあるのは確かです。長野冬季五輪前にあった地価高騰に似た状況になっていますが、村として住民生活に過度な負担が生じるような地価高騰を招く不動産取引や開発を推進しているものではありません。先に述べたように国際指標の認証等を受けることのできる取り組みを推進することで、持続可能性や環境対策など、村の方向性を明確化して、村全体の意識を共有しています。もともと住んでいる人たちが、経済的・社会的にも豊かな気持ちで、長く住めることを重視していきたい。地方自治体だけでは解決できない課題であり、国にも対策をお願いしています。 「多様性」「共存」が育む、豊かなライフスタイル ―移住者についてお聞かせください。 丸山：他の地域に比べ、海外にルーツを持つ人が多いのも特徴です。定住人口を見ると、通年では海外にルーツのある人は約１割、冬になると２割ほどに。もちろん国内の移住者も多くいらっしゃいます。地価高騰などもあり、白馬村の家賃は比較的高いと言われますが、仕事はありますし、豊かな大自然にも恵まれていますので、移住環境としては魅力的な場所なのではないでしょうか。基本理念に、「白馬村の豊かさとは、多様であることから交流し、学びあい、成長する村」とあります。「多様性」や「共存」によって育まれる豊かさを感じている人も多く、新しい人や出来事にはオープンな気質もあり、その点でも移住しやすいと思います。

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  自然景観に魅かれて移住するひとも多い白馬村
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  仕事や会議で使えるコワーキングスペースも

―子育て・教育支援で力を入れている点は何でしょうか。 丸山：財政的に楽ではない中で、（国による第１子・2子に加えて）白馬村独自に第3子以降に出産祝い金の支給を始めました。入学・卒業祝い金の制度も創出しました。「子育て支援ルーム」の建て替えにも2025年度から着手し、特に、要望の多かった「親子で安心して遊べる公園」を隣接する予定です。子どもたちの多様な個性を大切にしながら過ごせる場所として、B＆G財団（東京）の支援で、「子ども第3の居場所」もオープンしました。出産から育児まで一貫して、安心して子育てできる環境整備を進めています。また、私自身がイベントや式典に出向き、子どもたちと一緒に歌ったり、伴奏したりすることもあります。予算（お金）のかからない子育て支援です！ ―介護・福祉支援についてはいかがでしょうか。 丸山：長年、要望のあった障害者のグループホームを2023年に開所しました。高齢者福祉では、「介護予防」に力を入れています。味の素（東京）と健康増進やスポーツ振興などの連携協定を結んだり、企業版ふるさと納税を使い、五輪施設の「ウィング21」内のフィットネスルームの内装や機器を一新し、使いやすくしました。また、オンデマンド乗合タクシーを住民用にも整備。デジタル上に100カ所以上の停留所を設置し、利用しやすくしました。65歳以上や妊婦さんなどは、自宅前乗降車で利用できます。デジタルを活用することで地域の生活交通の利便性を高めました。高齢者の免許返納後の移動手段にもなるよう期待します。

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  高齢者福祉では介護予防に力を入れている
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  オンデマンド乗合タクシー

―気候変動対策に積極的に取り組んでいるようですね。 丸山：自然あっての白馬村には深刻な問題です。2019年から「白馬村気候非常事態宣言」翌年に「ゼロカーボンシティ宣言」を相次いで発出し、2022年には「ゼロカーボンビジョン」を作り、2024年には2030年に向けた行動計画「ゼロカーボンロードマップ」を作成、具体的な取り組みを示しました。脱炭素などで社会を変えるGX（グリーントランスフォーメーション）統括監を置き、庁内横断的にゼロカーボン施策を推進しています。また、電気自動車購入や断熱住宅（ZEH）への村独自の補助金を設けました。名古屋大学との脱炭素の実証実験も開始し、先進的な対策と、住民や行政、事業者が一体になって地道に取り組む対策を進めています。 長野冬季五輪の開催で生まれた自信 ―長野冬季五輪のレガシーについてどうお考えですか。 丸山：五輪施設の維持費は負担ですが、工夫次第で利用価値は高まります。シャンプ台に水をまいて、水遊びをする夏のウォーターイベントは、子育て世代に大好評です。そして、施設というハード以上に「マインド」は間違いなく息づいています。原田雅彦さんらが世界に見せつけた日の丸飛行隊の凄さは、小林陵侑選手らに引き継がれ、荻原健司さんたちノルディック複合種目の日本の強さは渡部暁斗選手や渡部善斗選手らに引き継がれました。種目は違いますが、パリ五輪のスケートボード男子パークには白馬村出身の永原悠路選手が出場しました。冬季五輪開催地の白馬村は「世界のHAKUBA」なんだという自信が生まれ、世界を身近に感じる若い人が増えていることは心強い五輪のレガシーです。

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  白馬クロスカントリー競技場（スノーハープ）
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  白馬ジャンプ競技場
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  白馬オリンピックメモリアルギャラリー
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  ウォータースポーツフェスティバルの様子

―将来に向けてどのような展望を描いていますか。 丸山：特に観光面では、白馬村にもともとある素晴らしい自然や伝統・文化を大切にしていくべきです。山岳・民宿文化に根付く村のストーリーや、それを案内するガイドといったソフトをもっと磨き上げていきたい。また、地区自治会や消防団への加入など、住民自治の存続には危機感を持っており、アンケート調査をしたり、懇談会を全地区で行い、策定を予定している次期総合計画や自治基本条例に反映していきます。外国人でも自治に参加しやすいように言葉の壁も解消し、将来的には、地域のことは地域で協力して取り組む、幅広い世代で住民主体のまちづくりを進めていきたいと考えています。