未知なる秋のNAGANOの絶景を訪ねて 燃えるような赤、目が覚める黄金色、針葉樹の深い緑。織りなす彩りが町じゅうを包み込む秋の長野県。紅葉はもちろんのこと、秋を感じる絶景スポットを厳選して紹介していこう。いつもの秋とちょっと違う旅で世界が変わるかも。 １.絶景の眺望と北信濃らしい里山風景 飯山市信濃平地区は田園風景が広がり、その背景にある黒岩山の登山道途中には〝鷹落山〟と呼ばれる、古くからの物見の場所がある（現在は、ハングライダーの離陸地）。その眺望は北信濃屈指。秋には風に揺れるススキのはるか眼下に、稲刈り時季の田んぼが、パッチワークのように見える（クマに注意）。 隣りの中野市の旧豊田村地区からは、千曲川と棚田のはぜかけ風景が望める。北信濃らしい山あいの里山風景が残るエリアだ。 ２.長野市の秋の風物詩「長野えびす講煙火大会」 長野市岩石町にある西宮神社の御祭礼・えびす講（11月18～20日）にあわせて行われる「長野えびす講煙火大会」。1899（明治32）年に始まり、戦中・戦後の中断を経て、2024年で118回目を迎える。全国の一流の煙火師だけを厳選したことから、若手の間では「出世煙火」として知られる。11月23日の開催だけに、スターマインなどの絢爛豪華な打ち上げ花火、大輪の尺玉など1万発の煙火が澄んだ晩秋の夜空を彩る。 ３.「千曲川ワインバレー」のブドウ畑と収穫風景 2024年現在、5つある信州ワインバレーの一つ「千曲川ワインバレー」。エッセイストで画家の玉村豊男さんから始まった、東御市を中心とした東側は、小規模で個性的なワイナリーが多い、注目のエリアだ。ワインブドウが実った秋のヴィンヤードは美しく、芳醇な香りが漂う。情熱を注ぐ生産者・醸造家らが収穫する姿が見られるのもこの時季ならでは。レストラン併設のところもあるので、ワイナリー巡りを楽しんでみては。 ４.碓氷峠にかかる技術と芸術の鉄道橋「めがね橋」 交通の難所だった旧信越本線の軽井沢～横川（群馬県）間にあるレンガ造りの４連アーチ橋、通称「めがね橋」。1892（明治25）年に建造され、長さ約90m、高さ約30ｍの規模は日本最大で、国の重要文化財。鉄道の役割を終えた今は、「廃線ウォーク」（横川駅側）が人気だ。軽井沢側からは、車で旧国道18号線（中山道）を20分ほど。最高の技術で造られたアーチ橋は芸術的。技術遺産と自然の紅葉とのコラボは幻想的だ。 ５.「高ボッチ高原」の大パノラマは絶好の写真スポット 八ヶ岳中信高原国定公園にある「高ボッチ高原」。1665ｍからの北・中央・南アルプス、八ヶ岳…など、360度見渡す限りの大パノラマは気分爽快だ。天気が良ければ、諏訪湖越しに富士山も。夏は放牧された乳牛が草をはむ様子が風物詩だが、秋は、澄んだ空気の下、燃えるような夕景や満点の星空が視界いっぱいに広がり、人々を魅了する。時を追って変化する風景は絶好のシャッターポイントで、全国から写真愛好家が集う。 ６.安曇野の自然を満喫「国営アルプスあずみの公園」 北アルプスの麓に広がる「国営アルプスあずみの公園」。安曇野の自然や里山、そこで暮らす人々の生活や文化に触れられるのが人気だ。秋の堀金・穂高地区では、12品種18万本のコスモスのほか、キバナコスモスやジニアが咲き誇り、10月にはコスモスフェスが開かれる。11月からは県下最大級のイルミネーションが始まる。大町・松川地区では9月～11月に紅葉フェスがあり、多彩な参加・体験型イベントが行われる。 ７.名画の舞台になった神秘の水鏡「御射鹿池」 日本画の巨匠・東山魁夷の名作「緑響く」のモチーフになった場所として有名。かつて、俳優の吉永小百合さん出演のテレビCMでは、カラマツ林の青と湖に白い馬が現れる美しい映像で、この絵に敬意を表した。秋はカラマツの紅葉がまさに〝響く〟ように見事。湖面は波立つことは少ないが、静寂な朝がおすすめ。木々の紅葉が静かな水面に映る様子は、名画のように神秘的だ。アクセスしやすく、周辺には温泉もある。 ８.日本のチロル「下栗の里」で紅葉と雲海を望む 文筆家で登山家の深田久弥が、「下栗ほど美しく平和な山村を私は他に知らない」と、著書「日本百名山」で絶賛。飯田市上村の中心地から急峻な山稜を上がった先に「下栗の里」がある。「天空の里」「日本のチロル」とも呼ばれ、傾斜約30度の山腹に切り拓いた畑や民家が点在。燃えるような紅葉は、険しい自然にある山里を鮮やかな色彩で包み込む。里の景色を俯瞰できるように、地元住民が整備した「天空のビュースポット」がある。 ９.江戸情緒残る木曽平沢～奈良井宿の街並みと紅葉 木曽平沢は400年余り続く木曽漆器の産地で、10月の漆器祭では職人の技が光る品々が並ぶ。隣の奈良井宿は中山道の宿場町としてにぎわった。どちらも国の重要伝統的建造物群保存地区。秋は、赤や黄色に染まった周囲の山々が、江戸時代の風情が色濃く残る街並みを覆うように迫ってくる。名物の五平餅を頬張りながら、歩いてみては。奈良井宿にある総ヒノキ造りの太鼓橋「木曽の大橋」からの眺めも迫力満点。 １０.市田柿発祥の里・高森町でみる「柿のれん」 南信州の高森町市田地域で栽培が広がった干し柿「市田柿」。その歴史は500年以上といわれる。5月下旬に柿の花が咲き始め、余分な実を摘む摘果を行い、実が色づいた10月下旬から収穫。皮むきを丁寧に行い、風通しの良い場所で約1ヵ月乾燥させる。その際、柿の実が重ならないように間隔をあけて吊るす「柿のれん」は、晩秋の風物詩だ。その後、「柿もみ」などの作業を経て、高級和菓子・市田柿ができあがる。